ソースの瓶

2008-10-25 04:40


あ、ダメになってる。
僕は思わずそうつぶやいた。

ある日、僕が住む町に、程度のよいコーヒーを出すという評判の洒落たカフェがオープンした。どんなものかと足を運ぶと、なるほど内装は丁寧につくりこまれ、程よい日差しが店内を包んでいる。座り心地のよい白いソファは、広々としたテーブルとセットで店内を統一している。軽やかな音楽が流れ、ブックシェルフには観葉植物と一緒に有機栽培やらロハスやらの雑誌が並べられている。その日、僕はベーグルとコーヒーのセットを注文し、こんな片田舎でもおしゃれなカフェができるものだな、と感心しながらその店を後にする。

2年、いや3年くらいしてからだろうか、思い出したかのようにあの日のカフェに足を運ぶ。
店内は以前よりもどことなく薄暗く感じられた。
ソファに腰を下ろしテーブルの上に目をやる。
そこには、以前なかったはずのソースの瓶がある。
メニューを見ると、以前なかったはずの焼きそばや焼うどんといった項目がならぶ。

あ、ダメになってる。
僕は思わずそうつぶやいた。

BGMにはJPOPが流れ、本棚には週刊初年ジャンプ。
だらしなくエプロンを掛けた若者が注文を取りに来る。
きっと若者のズボンは、通常のそれよりも少しだけずり落ちているにちがいない。
洒落たカフェがダメに向かって変容をきたす日。
それはテーブルの上に、焼きうどん用のソースの瓶が置かれた、その瞬間なのかもしれない。